ニーズ

〜ミルクシェイクについての2つの調査〜

 

新しいミルクシェイクの企画開発のために2つの調査が行われた。


ひとつは伝統的なやり方である。
ミルクシェイクに関心がある消費者を集めて、グループ・インタビューをおこない、好きなシェイクを示してもらう。

 

どんな味で、どの程度の濃さで、どんな中身が入って、甘みはどうで、容量は……、

といった具合である。 


それらのデータを分析すれば、どういう消費者がどういうシェイクを好むのかがわかる。

あとは、うまくポジショニングして、
いろいろのタイプの消費者に対応する商品ラ
インを編成すればよい。

 

しかし、これはうまくいかなかった。
理由は、差別化されたと言っても、旧来のミルクシェイクの延長線上に位置づけられていたからだ。
いわば同質化競争の真っ只中に入っていく類の商品であった。


実際に採用されたもうひとつのやり方は、
レストランに来るお客さんを観察したのである。
少し変わった調査ではじまる。
毎日ずっと観察していると、

早朝にミルクシェイクを買いに来る男性がいることに気づいた。

 

早朝に男性がミルクシェイク?


不思議に思ってさらに観察を続けると、彼ら
は通勤用のクルマにそれを持って乗る。

シェイクは、クルマで通勤する途中で食する、朝食代わりになっていたわけである。
そのニーズに合わせて商品企画をおこなう。
いろいろな工夫が考えられる。

30分ほどの車中での通勤時間を退屈させないようシェイクにいろいろな果物のかけらを入れて新鮮な感覚を与え続ける。

小腹を保たせるような濃い目のシェイクにす

る。

急いでいる彼らに購買時間を短縮するためのプリペイドカードを準備する。

手やクルマを汚さないよう容器を工夫する。

いろいろありそうだ。

 


こうした商品/サービスが開発されたとき、

通勤時の朝食用にミルクシェイクを買う彼らはきっと言うだろう。

 

「そうそう、こんな商品/サービスが欲しかったんだ」と。

(ビジネス寓話50選より抜粋)

 

 

ニーズの深掘りがとても大切なことで、お客様の目線で。

 

 

心構えこそすべて

鈴木康介